会話参加者の振る舞いを考慮した複数会話スケジューラの実装と評価:theramin

ロボットが公共空間で活動することを考えた場合,複数のユーザがそれぞれ目的を持って行動しているため,ロボットが複数のタスクを同時に抱える状況が考えうる.会話というタスクに注目すると,ロボットがすでに会話している途中に第三者が話しかけてくる場合のみならず,知り合いとすれ違う際の挨拶など,社会通念上,それまでの会話を中断して別の会話を行うことが望ましい状況が起こり得る.本研究では,割込み者がそれまでに行われている会話とは異なる内容の会話を行うことを期待していた場合の,ロボット対応をデザインする.従来の会話中の割り込みに関する研究は,協調的なインタラクションの一部として解釈可能な割込みについて扱ったものがメインであった,ロボットの実行すべきタスクとして,それまでの会話と全くコンテキストの異なる会話が割込むようなケースに関して研究したものは少ない.ロボットが割込みに対応するには, 会話中の割込みの検出,優先度に基づく会話順判断,および会話切り替え時の待たせる人への配慮行動が必要 となる.本研究では優先度に基づく会話順判断と待たせる人への配慮行動に着目し,会話スケジューリング手法 CACTS-Cを提案する.CACTS-Cは用事の有無,会話の短さ,元会話者と割込み者の人間関係,割込み時の情動の4つの因子によって会話の優先度付けを行い,会話順を判断する.更に,CACTS-Cでは状況に応じて待たせる人に対し会話順の説得をおこなう.会話シナリオの記述には,チャットボット用のマークアップ言語である AIML (Artificial Intelligence Markup Language) を隣接ペア単位で会話シナリオ記述するように独自に拡張したAIML-apを用いて,実験用ロボット会話システムの実装を行った.実装したロボットの割込みの対応の印象評価の結果,優先度に基づく会話順判断の有効性を示した.また,CACTS-Cの会話順について説得する行為が,単に会話順の決定理由の説明する場合と比較して,ロボットの公正さの印象が有意に高いことを示した.