遠隔者の身体的存在感を高めるテレプレゼンスロボットの提案:furuyan

テレプレゼンスロボットは遠隔者の身体的・社会的存在感を再現し,円滑な遠隔コミュニケーションを支援するロボットである.しかし,既存のビデオチャットを用いたロボットでは,完全に遠隔者の存在感が再現されているとはいえない.一因として,画面上における背景の存在がある.背景によって,遠隔者が別の場所に居ることを明確に意識させてしまうからだ.そこで我々は,ビデオチャットにおける遠隔者映像の背景部分のみをテレプレゼンスロボットが置かれている場の背景映像にリアルタイムに合成することにより,遠隔者の身体的存在感を向上させたロボットの実装を行い,その評価を行った.

複数人対話における画面内エージェントとのコミュニケーションチャネル確立手法の提案:fly

近年,ディスプレイ上で表示されるエージェントもしくはモニタ越しにビデオ通話など人物を,見る機会が増えている.それに伴い人とインタラクションする画面内案内エージェントが増えている.画面内エージェントとの1対1のインタラクションでは,話し手と聞き手が確定しているので受話者が誰か考慮に入れる必要はない.しかしテレプレゼンスロボットのような複数人会話を行う場合,周囲にいる誰に発言しているがが問題となってくる.画面内のエージェントやモニタ内の人物はモナリザ効果によってモニタの外へ視線を向けることが困難である.画面に映る人が視線を向けるための研究が盛んに行われている. 本研究ではコミュニケーションチャネルの接続に注目し,複数人会話であること考慮したうえで特定の人と会話をする画面内エージェントを提案する.エージェントのモニタの背景を注視対象に追従させる手法と追従した時に体の姿勢に慣性を持たせる手法を提案し評価した.また瞳に注視対象を直接映すことによって注視対象を表顕する手法を提案し評価した. 既存の注視を行える画面内エージェントの研究では,その注視対象の評価を行っているが,注視対象以外の会話参加者にどう思われているか検証していない.本研究では瞳に注視対象を映す手法と先行研究の手法を作成し,比較実験を行う.

会話参加者の振る舞いを考慮した複数会話スケジューラの実装と評価:theramin

ロボットが公共空間で活動することを考えた場合,複数のユーザがそれぞれ目的を持って行動しているため,ロボットが複数のタスクを同時に抱える状況が考えうる.会話というタスクに注目すると,ロボットがすでに会話している途中に第三者が話しかけてくる場合のみならず,知り合いとすれ違う際の挨拶など,社会通念上,それまでの会話を中断して別の会話を行うことが望ましい状況が起こり得る.本研究では,割込み者がそれまでに行われている会話とは異なる内容の会話を行うことを期待していた場合の,ロボット対応をデザインする.従来の会話中の割り込みに関する研究は,協調的なインタラクションの一部として解釈可能な割込みについて扱ったものがメインであった,ロボットの実行すべきタスクとして,それまでの会話と全くコンテキストの異なる会話が割込むようなケースに関して研究したものは少ない.ロボットが割込みに対応するには, 会話中の割込みの検出,優先度に基づく会話順判断,および会話切り替え時の待たせる人への配慮行動が必要 となる.本研究では優先度に基づく会話順判断と待たせる人への配慮行動に着目し,会話スケジューリング手法 CACTS-Cを提案する.CACTS-Cは用事の有無,会話の短さ,元会話者と割込み者の人間関係,割込み時の情動の4つの因子によって会話の優先度付けを行い,会話順を判断する.更に,CACTS-Cでは状況に応じて待たせる人に対し会話順の説得をおこなう.会話シナリオの記述には,チャットボット用のマークアップ言語である AIML (Artificial Intelligence Markup Language) を隣接ペア単位で会話シナリオ記述するように独自に拡張したAIML-apを用いて,実験用ロボット会話システムの実装を行った.実装したロボットの割込みの対応の印象評価の結果,優先度に基づく会話順判断の有効性を示した.また,CACTS-Cの会話順について説得する行為が,単に会話順の決定理由の説明する場合と比較して,ロボットの公正さの印象が有意に高いことを示した.

v-IoT -MRを用いた生活支援情報提示手法-:shandy

クラウド型情報インフラの整備が進み,エッジコンピューティングの必要性が増してきている中,ネットワーク接続に特化した計算機の低価格化及び小型化により,企業がネットワーク機能を備えた製品を生産し,IoT 分野が醸成されつつある.近年ではセンサでデータを収集する機器だけでなく,ユーザに対し能動的に生活支援情報を提示する機能を持つ機器も増えた.しかし,日用品等,ユーザが 1 つの行動に絞り込むことができる物品に情報提示機能を付与することは難しく,Smart Speaker の様に豊富な計算資源をもつ機器から多種多様な情報が提供されているのが実情である.
本研究では,Mixed Reality 技術を応用することで,「買う―捨てる」のサイクルが激しいペットボトルのような,IoT 機器化困難なモノを仮想的に IoT 機器化する手法,v-IoT システムを提案する.本手法は,ユーザへ提示する情報と促したい行動を,モノが持つアフォーダンス情報や機能を用いてマッチングを行う.連想概念辞書を用いて通知内容から取得できる動詞と距離が近いモノを指定することにより,v-IoT システムは行動の連想が容易なモノを介してユーザに情報提示を行うことが可能となる.結果として,ユーザにとって理解しやすく負担の少ない情報提示手法を実現できることが期待される.
予備実験では,ユーザの視点から IoT 機器化困難なモノからの情報提示手法の印象・ユーザビリティ評価を行い,デザイナの視点からシステムの表現力・工程数に対するパフォーマンスについて検証・評価を行った.実験で得た結果から,提案した手法はユーザにとって理解しやすい情報提示が行えたと示されたが,本システムが指定するモノとは異なるモノを連想したユーザは提案システム全体の評価が低くなる傾向があることが明らかとなった.そこで,ユーザ各々の行動を把握し連想概念辞書へ反映することで更なる v-IoT システムへの印象評価の向上を試みた.改善後のシステムを用いて再度実験を行った結果,動的に辞書変更したシステムの方が被験者の選択肢に対する精度も高く,より行動が連想しやすいモノを選択できるシステムであることが示された.

ModuRo ソフトロボットのためのプロトタイピング環境:ak1ra

工場を主な活躍の場としてきたロボットが,今や生活の中でありふれた存在になろうとしている.一方,従来の硬く力強いロボットは,共に人間と協働する際に凶器となったり,恐怖心を煽るものであった.そこでロボットの構造や外装,アクチュエータにやわらかさを付与する試みがソフトロボットである.ソフトロボットはサービスロボットのみならず,バイオメカニクスや産業・医療の幅広い領域に応用が始まっている.一方,ソフトロボットはこれまでは簡単なプロトタイピングが難しかった.そこで本研究では,ソフトアクチュエータの一つである形状記憶合金を備えたモジュラロボット “ModuRo” を開発し,ソフトロボットの円滑なプロトタイピング環境を提案する.ModuRoの2種類のプロトタイプを実装し,アクチュエータとしての性能評価とぬいぐるみ型ソフトロボットのプロトタイピングにおけるユーザビリティテストを実施した.性能評価では,ソフトアクチュエータが安定した出力を発揮していることがわかった.ユーザビリティテストでは,ModuRoシステムと既存のコードベースのプログラミングに表現力の有意差は見られなかったが,ModuRoを用いることによる作業効率向上が示唆された.

AfRAS: Video Gaming with Emotion Expressive Virtual Rival Player:kiyomo

With the expansion of video gaming industry reaching into newer territories, video games are no longer just an entertainment tool. They can become one’s career, competition, healthcare, or social interaction. Within the values that video game brings, something that is close to casual player is social interaction on physical world or cyberspace. However, sometimes interaction with an entity without embodiment can lose player’s engagement or satisfaction. For some of the more vulnerable people who relies on video game as a source of social interaction, the lack of embodiment can greatly reduce the enjoyment of playing games.
This research will discuss a possible solution to the lack of embodiment. Many Player vs. Player games have a game mode versus CP(Computer Player). However the experience in such modes can lack satisfaction on the player side due to the lack of engagement, challenge, and involvement. This paper proposes a human-agent interaction system in the context of video game. The virtual agent will act as if it is the CP, creating stronger ties and possible companionship. This research will design and evaluate an auxiliary system that enhances the experience of playing against CP by using an on-screen virtual agent. Emotion will be synthesized through an emotion engine using the game state as an input, and the agent will display facial expressions and appropriate utterances. The evaluation will be done through user-end perspective and developer perspective to grasp the whole model of our system, AfRAS, and possible implications to the gaming ecosystem.

[優秀発表賞] 遠隔者の多人数会話への参与を支援するテレプレゼンス仲介ロボット, 堀江拓実, 山口留実, 桑原多瑛, 古谷優樹, 伊賀理心, 飯森優斗, 勢子雄大, 高汐一紀, 第34回 人間情報学会講演集, pp. 9-10,2019年12月

多人数参加型のテレコミュニケーションでは,Fact-to-Faceでの場合と比較して遠隔者の非言語的な振る舞いが伝 わりづらく,会話における発話権の取得が困難,すなわち会話に参加しにくいという問題を抱えていた.この問 題に対し,テレプレゼンスロボットの身体性を強化しアバターロボット化することで,遠隔者の非言語的な振る 舞いを直接的に他の参与者に伝え,発話権の取得を支援する手法が議論されている.しかし,これらの手法では 実際に話者交代が起こるかは受け手の判断に依るため,不確実性が高い.本稿では,仲介者としてより積極的に 遠隔者の発話権の取得を支援するエージェントソフトウェアを搭載したテレプレゼンスロボットの実現を目指し, その第一段階として,遠隔者の会話参与状況と被注視状況の関係性について分析する.

http://www.ahi-soc.info/pdf/34thAHI_proceedings.pdf

Virtual IoT: An IoT Platform with MR Technologies Realizing Low-cost and Flexible Notification of Life-support Information,Kentaro Taninaka, Kazunori Takashio, IoTaIS2019,2019年11月

Virtual IoT: An IoT Platform with MR Technologies Realizing Low-cost and Flexible Notification of Life-support Information
Abstract : The miniaturization and decreasing cost of networking computers, along with the advancement of cloud infrastructure has eased the implementation of IoT products for manufacturers. The increase in such products has led to the rise in IoT devices with information provision function. However, it is difficult to make products display information in consideration of the design on the surface, like daily commodities, since it requires the device to have a wealth of computational resource. In this paper, we propose Virtual IoT System, the approach which adds information-giving functions to the non-computing objects using Mixed Reality technology. This system enables appropriate things to give adequate information at the appropriate timing. In this paper, we explain the detail and design of Virtual IoT System. In addition, we conduct an experiment to evaluate the usability and expressive power of Virtual IoT system.

Video Gaming with Emotion-Expressive Virtual Rival Agent, Shinsuke Kiyomoto, Kazunori Takashio, 信学技報, vol. 119, no. 267, CNR2019-38, pp. 79-80, 2019年11月.

With the evolution of computer gaming hardware causing entertainment to change, on-screen PvP video games still remain to be the most popular option. Most of these games have a game mode versus CP(Computer Player). However the experience in such modes can lack satisfaction on the player side due to the lack of engagement, challenge, and involvement. This research will design and evaluate an auxiliary system that enhances the experience of playing against CP by using an on-screen virtual agent. Emotion will be synthesized through an emotion engine using the game state as an input, and the agent will display facial expressions and appropriate utterances.

空間内へ溶け込むテレプレゼンスロボットの実装と評価, 古谷優樹, 堀江拓実, 高汐一紀, 信学技報, vol. 119, no. 267, CNR2019-37, pp. 77-78, 2019年11月.

テレプレゼンスロボットなどに搭載されているビデオチャットでは,遠隔で会話に参加している相手の背景が見えてしまうことによって,相手が別の空間にいるということが意識されてしまう.そこで我々は,ビデオチャットにおける相手の映像の背景部分のみをテレプレゼンスロボットが置かれている場の背景映像に入れ替えることで,遠隔参加者との一体感が高まりコミュニケーションがより活発になる,という仮説を立て研究を行なっている.本研究ではシステムのプロトタイプの実装および評価実験を行い,背景をロボットが置かれている場の画像に置き換えることで会話の活発度や遠隔者の存在感の向上に寄与することが明らかになった.