ロボットの段階的成長過程のデザイン : 齋藤光輝(慶應藤沢高), 谷中健大朗, 高汐一紀, 信学技報, vol. 118, no. 94, CNR2018-4, pp. 19-22, 2018年6月.

生活を共にするパーソナルロボットの成長は,ユーザに親しみやすさをもたらす.本研究ではロボッ トの成長を促す手段の 1 つとして「教える」という行為に注目する.1 度教わるだけで完璧に修得するような急激 な学習ではなく,ペットの躾けと同様,ユーザが「教える」という行為を繰り返すことによりロボットが徐々にス キルを修得する「段階的な学習」の方がユーザはより長期的に親近感を感じることができるという仮説のもと,ゲ ーミフィケーションの要素を組み込んだ 3 種類の学習過程をデザインする.加えて,どの学習過程が最も親しみやす く感じるのかをコミュニケーションロボット COZMO を用いて検証する.

対比的応答を用いて自然なサブカル雑談を行うロボット : 中嶋俊太(山手学院), 堀江拓実, 桑原多瑛, 谷中健太郎, 高汐一紀, 信学技報, vol. 118, no. 94, CNR2018-5, pp. 23-27, 2018年6月.

コミュニケーションロボットは人間との長期的な関係性を築く必要がある.そのためには,一時的に利用 される雑談応答サービスで重視される単文での面白さよりも,会話としての自然さを高めなければならない.本研究 では,相手の発話に呼応した対比的応答を行うロボットシステムの実装を行なった.サブカル雑談において対比的応 答は,盛り上がりに必要な共感の呈示や話題転換など会話の進行上の重要な役割を果たしている.単文での面白さを 重視した応答を行うロボットと本ロボットがユーザに与える印象を比較し,発話生成ポリシーが人間とロボット間の 関係構築に与える影響について議論する.

親近感を生み出す協働ロボット間インタラクションの身体性デザイン : 柏木梨佐(聖心女子学院), 宮本凜太郎, 高汐一紀, 信学技報, vol. 118, no. 94, CNR2018-6, pp. 29-32, 2018年6月.

次世代のロボットサービスでは,複数のロボットが連携動作を用いて人と協働,共生することが前提となる ため,如何にユーザーの親近感を得るかが重要な意味を持つ.ロボットは外装だけでなく,その挙動もまたユーザー に不安感をあたえないようにデザインされなければならない.本研究ではロボット間の連携動作に,敢えて身体性を 持ったロボット間インタラクション要素を加える手法を提案する.既存のロボットを用いた連携動作と,本システム を用いた場合を比較し,協働,共生するロボットに対するユーザーの印象変化を評価する.

C2AT2 HUB: 人の心理モデルに基づいたロボットの長期的な性格形成手法 : 川那子進太郎, 高汐一紀, 信学技報, vol. 117, no. 443, CNR2017-45, pp. 127-132, 2018年2月.

現状のコミュニケーションロボットの多くはロボット個体別の個性をもっておらず,個性の欠落がロボットへの愛着の低下やロボットとのコミュニケーションにおける違和感の原因となっている.そこで本研究では,長期的なインタラクションによってロボットの性格を形成する手法であるC${}^{2}$AT${}^{2}$ HUBを提案する.本手法では,ロボットの情動を「対人情動」と「情動」の2種類によって定義し,それぞれの情動の遷移傾向を,ロボットに対するユーザ行動の履歴によって調整することで緩やかに性格形成を行う.評価実験結果から,本手法によってロボットがより自然に性格付けされ,ロボットの印象や愛着が向上することが明らかになった.

会話の文脈と割り込み状況を考慮した会話タスクスケジューリング手法CACTSの実装と評価 : 堀江拓実, 高汐一紀, 信学技報, vol. 117, no. 443, CNR2017-30, pp. 45-50, 2018年2月.

公共空間で動作するコミュニケーションロボットでは,動的な会話タスクの生成と,会話相手に違和感や 不快感を与えない会話タスクの切り替えが必要となる.本論文では,ロボットが会話外から割り込まれた場合の会話 タスクのスケジューリング手法として,ロボットが割り込みを受けると,内容に合わせた会話タスクを生成し,会話 の重要度,長さ,会話相手同士の人間関係,会話相手の情動,および現在の会話タスクの隣接ペアの情報に基づいて 会話タスクのスケジューリングを行う CACTS を提案し.偶然ロボットを見ている周囲の人間の立場と,割り込まれ る立場から,常に最新の会話タスクを優先する場合と比較した本手法の印象を評価した.実験の結果,提案手法の有 効性が示された一方,割り込まれた状況に対して一意にスケジューリングを判断することの限界も示された.

DigiFAB環境と連携したデザイン指向STEM教育ロボットキット : 真島大樹, 高汐一紀, 信学技報, vol. 117, no. 198, CNR2017-14, pp. 31-36, 2017年9月.

世界中でSTEM教育が盛んになる中,日本においてもTechnologyやEngineeringの両面からの教育の充実が求められており,センシング,情報処理,アクチュエーションの基礎を学ぶツールとして,ロボットをターゲットとした教育ツールが注目されてきた.一方で,従来の教育用ロボットキットはロボットの製作を目的としたエンジニアリング層からのボトムアップ思考のアプローチが主であり,インタラクションやアニマシーといった,トップダウン型のロボットデザイン分野への適用は難しかった.本稿では,デジタルファブリケーション環境と連携することによりデザイン指向のロボット教育を可能とする,オープンソースSTEM教育向けのロボットキットの開発事例を報告する.

Ex-Amp Robot: Expressive Robotic Avatar with Multimodal Emotion Detection to Enhance Communication of Users with Motor Disabilities : Ai Kashii, Kazunori Takashio and Hideyuki Tokuda, 26th IEEE International Symposium on Robot and Human Interactive Communication (RO-MAN 2017), Aug to Sept, 2017.

In current society, there are numerous robots made for various purposes, including manufacturing, cleaning, therapy, and customer service. Other robots are used for enhancing H2H communication. In this research, we proposed a robotic system which detects the user’s emotions and enacts them on a humanoid robot. By using this robotic avatar, users with motor disabilities are able to extend their methods of communication, as a physical form of expression will be added to the conversation.

MoDe:ヒューマノイド型ロボットのためのモーションデフォルメツール : 林亮太(市立浦和), 堀江拓実, 真島大樹, 川那子進太郎, 宮本凜太郎, 高汐一紀, 信学技報, vol. 117, no. 95, CNR2017-8, pp. 41-44, 2017年6月.

ロボットは人間の動きをそのまま再現することは構造上困難であるため,人間の動きを適度にデフォルメすることが必要となる.本論文では,ヒューマノイドロボットのためのモーションデフォルメツールMoDeを提案,そのプロトタイプを紹介するとともに,適用実験を通して,モーションデザインにおける有用性と今後の展望を議論する.本プロトタイプでは,モーションキャプチャによって取得された人間の動作データをデフォルメするパラメータとして,モーションの大きさ(Scale)と分解能(Step)を実装,両パラメータを適正値に設定することで,ヒューマノイド型ロボット向けのキャラクタ付けされたモーションデータをリアルタイム生成することが可能となった.

隣接ペアの連鎖を考慮した対話フローのアトミシティ検出とその効果 : 堀江拓実, 高汐一紀, 信学技報, vol. 117, no. 95, CNR2017-5, pp. 23-28, 2017年6月.

多対多のインタラクションを想定したコミュニケーションロボットでは,動的な対話タスクの生成と,対話相手に違和感や不快感を与えないタイミングでの対話タスクの割り込み制御を行う必要がある.本論文では,隣接ペアとその連鎖を考慮して検出したアトミシティを利用した会話スケジューリングが,本来の会話相手に対して良い印象を与えるかを検証した.実験には,Artificial Intelligence Markup Language (AIML) を拡張し,隣接ペアを表現可能にした対話タスク記述言語 AIML-ap を新たに定義し,用いた.実験の結果,隣接ペアの連鎖を考慮した会話スケジューリングが本来の会話相手に対して良い印象を与える可能性を示した.