クラウド型情報インフラの整備が進み,エッジコンピューティングの必要性が増してきている中,ネットワーク接続に特化した計算機の低価格化及び小型化により,企業がネットワーク機能を備えた製品を生産し,IoT 分野が醸成されつつある.近年ではセンサでデータを収集する機器だけでなく,ユーザに対し能動的に生活支援情報を提示する機能を持つ機器も増えた.しかし,日用品等,ユーザが 1 つの行動に絞り込むことができる物品に情報提示機能を付与することは難しく,Smart Speaker の様に豊富な計算資源をもつ機器から多種多様な情報が提供されているのが実情である.
そこで本研究では,Mixed Reality 技術を応用することで,「買う―捨てる」のサイクルが激しいペットボトルのような,IoT 機器化困難なモノを仮想的に IoT 機器化する手法,v-IoT システムを提案する.本手法は,ユーザへ提示する情報と促したい行動を,モノが持つアフォーダンス情報や機能を用いてマッチングを行う.これにより,v-IoT システムは行動の連想が容易なモノを介してユーザに情報提示を行うことが可能となる.結果として,ユーザにとって理解しやすく負担の少ない情報提示手法を実現できることが期待される.本論文にて v-IoT システムの設計・詳細,プロトタイプを使用した評価実験を行った.
評価実験では,ユーザの視点から IoT 機器化困難なモノからの情報提示手法の印象・ユーザビリティ評価を行う.また,デザイナの視点からシステムの表現力・工程数に対するパフォーマンスについて検証・評価を行った.