複数人対話での共通基盤構築における非言語行動因子および社会的行動因子の分析,山口留実,渡辺巧登,桑田多瑛,古谷優樹,第37回人間情報学会講演集2020年12月10日

複数人対話において,参与者同士は発話内容をお互いに理解しているかどうかを確認し,共通基盤構築を行いながら対話を進める.共通基盤構築に関する研究は主に言語的な行動に着目して行われているが,我々は言語的因子のみならず非言語行動因子及び社会的対話行動因子が共通基盤会話構築に影響すると考えている.我々は共通基盤構築過程における各因子を観察できる課題として旅行計画立案課題を採用し,遠隔対話状況下において動画コーパスの収録を行っている.その目的は,遠隔対話と直接対話におけるこれら行動因子の差異,更には共通基盤構築や合意形成の影響に関して理解を深めることにあるが,本稿では,予備的分析において観察された社会的関係性による配慮行動や姿勢の同調行動について報告する.

v-IoT : AR による仮想的 IoT 環境の構築と連想概念による適切な情報提示オブジェクト選択手法, 谷中健大朗, 高汐一紀, 電子情報通信学会論文誌

計算機の低価格化及び小型化やクラウド型情報インフラの整備により,様々なIoT製品が登場した.近年では,ユーザに対し能動的に生活支援情報を提示する機能を持つ機器も増えている.しかし,日用品等,表面的な形状を考慮した情報をモノ自身から提示することは難しく,既にスピーカやディスプレイが搭載されている機器から多種多様な情報が提供されているのが実情である.本研究ではIoT機器化困難なモノを仮想的にIoT機器化する手法,v-IoTシステムを提案,有効性の検証を行った.本手法は,ユーザへ提示する情報と促したい行動を,モノに付随する機能や動詞情報を用いてマッチングを行う.連想概念辞書を用いて通知内容から取得できる動詞と距離が近いモノを指定することにより,v-IoTシステムは行動の連想が容易なモノを介してユーザに情報提示を行うことが可能となる.実験結果から,提案手法がユーザにとって行動を連想しやすいモノを選択できるシステムであることを示した.

Telepresence Robot Blended with a Real Landscape and Its Impact on User Experiences, Yuki Furuya, Kazunori Takashio, 2020 29th IEEE International Conference on Robot and Human Interactive Communication (RO-MAN 2020), Aug to Sept, 2020

Telepresence robots using traditional video chats do not yet fully represent the presence of a remote user. To enhance that presence, we propose a novel approach that replaces the background of the remote user with a real-time captured image of the area behind the robot. We assumed that the background of the remote user, which was visible on the telepresence robot’s display, was one reason for the reduction in presence because it might remind local viewers that the remote user is in another place. We found that our approach effectively enhanced the presence of remote user and reduced the negative impression of a delay. In this paper, we describe the new approach, its implementation, and an evaluation of the system. We evaluated the subjective impressions of communication through the proposed system. This approach also protects the privacy of the remote user and makes it more acceptable to people using telepresence robots from private places, e.g., a sickroom in a hospital.

[学生講演奨励賞]遠隔者の身体的存在感を高めるテレプレゼンスロボットの提案, 古谷優樹, 高汐一紀, 信学技報, vol. 119, no. 446, CNR2019-54, pp. 53-57, 2020年3月.

テレプレゼンスロボットは遠隔者の身体的・社会的存在感を再現し,円滑な遠隔コミュニケーションを支援するロボットである.しかし,既存のビデオチャットを用いたロボットでは,完全に遠隔者の存在感が再現されているとはいえない.一因として,画面上における背景の存在がある.背景によって,遠隔者が別の場所に居ることを 明確に意識させてしまうからだ.そこで我々は,ビデオチャットにおける遠隔者映像の背景部分のみをテレプレゼンスロボットが置かれている場の背景映像にリアルタイムに合成することにより,遠隔者の身体的存在感を向上させた ロボットの実装を行い,その評価を行った.

[学生講演奨励賞]複数人会話における画面内エージェントとのコミュニケーションチャネル確立手法の提案, 渡邉巧登, 高汐一紀, 信学技報, vol. 119, no. 446, CNR2019-53, pp. 47-51, 2020年3月.

近年3DCGキャラクタが普及し,対話型エージェントのアバタとして画面内エージェントに使用されつつある,しかし画面内エージェントではモナリザ効果というユーザに対する注視が曖昧になる問題が存在する.本研究では会話対象を瞳に映す手法を提案し話者受話者傍観者の分類を行う.またその時の受話者と傍観者に対して,画面内エージェントが適切な対象に会話していたかを実験,検証した.

HRIにおける割込み時の会話順合意形成コーパスの構築にむけて,堀江拓実, 山口留実, 桑原多瑛, 渡辺巧登, 高汐一紀, 信学技報, vol. 119, no. 446, CNR2019-52, pp. 41-46, 2020年3月.

日常生活において,会話の最中に割込み者が現れて全くコンテキストの異なる会話への参与を求めてくることがしばしば起こる.この割込み場面において,会話参加者らは会話順についての合意形成を行わなければならないが,会話順合意形成タスクは短時間で公正さを追求することが求められるという特徴を持つ.我々は,割込みが発生した際にどのように会話順についての合意形成が行われるかについて分析を目的とした人–ロボット間の会話コーパスの構築を目指している.本論文ではコーパスの設計と分析の指針について議論する.